講師:イワサマサヤさん
【聞き手:広報担当A.O】
教員を目指す私が、アジハラベイスでボランティアを始めた理由
高校三年生の頃、大学進学を考える中で、なにか子どもと関わる活動を経験したいと思っていました。そんなときにボランティア募集サイトで見つけたのがアジハラベイスでした。将来は社会科の教員になることを目指していたので、子どもたちの学習を支援する活動に魅力を感じ、参加を決めました。
ちょうどアジハラベイスの立ち上げ期だったこともあり、活動初期から関わることになりました。今では2年ほど続けていて、ボランティアの中では一番の古株になりました。現在は大学で教職課程を履修しており、今後は教育実習も始まる予定です。その準備としても、子どもと向き合うこの経験は、自分にとってとても大切な時間になっています。
「今の子ども」との向き合いから見えてきたこと
アジハラベイスがオープンした当初、子どもは3~4人ほどでしたが、今では人数も増え、年齢層も広がっています。中には幼稚園の子もいて、子どもたち全員に勉強に集中してもらうことが難しい場合もあります。ですが、学校とは違う場所に来ているからこそ、学びと遊びが交じり合った、学校や家庭ではできないような時間を作りたいと考えています。
今の子どもたちは、スマホやタブレットを使いこなし、音楽やバラエティなどの知識も豊富です。私の子ども時代とは明らかに違い、ここ10年で時代も子どもも変わったのだと実感しました。
また、アジハラベイスに来てくれる子どもたちは、自分のやりたいことを見つけて、積極的に取り組んでくれています。すぐ飽きるというよりも、始めたら集中してやり込んでくれる子が多いです。
そういった今の子どもたちの特徴も踏まえながら、どのように勉強モードに入ってもらうか、スタッフの意見を聞きながら工夫を重ねています。子どもたちにプリントをただ渡すだけではなかなか取り組んでもらえないこともあるため、学習をゲーム感覚で取り入れるような工夫が必要だと感じています。主体的に楽しく学ぶことが、これからますます大切になっていくと感じています。
「子どもを知る」ことが、自分の未来につながっていく
アジハラベイスのボランティアに興味のある方には、「かたく考えすぎなくて大丈夫ですよ」と伝えたいです。ボランティアは仕事ではありませんので、「ちょっと行ってみようかな」くらいの軽い気持ちで始めて大丈夫です。私も初めてのときは緊張しましたが、やりたいという気持ちさえあれば、自然となじめるものだと思います。
私の将来の夢は、教員になることです。だからこそ、今の子どもたちがどんなことに興味をもち、どんな姿勢で学んでいるのかを知っておきたい。平成と令和では、子どもの考え方や環境も違います。アジハラベイスでの経験は、教員になる前に「子どもを知る」ことにつながっていて、間違いなく自分の将来に役立っていくと感じています。子どもを知ってから社会に出ていきたい。それが、今の自分の目標です。
代表 神垣忠幸
【聞き手:広報担当A.O】
アジハラベイスをはじめたきっかけ
アジハラベイスを始めようと決めたのは2022年の秋。認知症の人と家族の会大阪府支部の代表をしていた時のことです。
その中で、若年性認知症の方のお子さんがヤングケアラーになっていることを知り、強く関心を持ちました。認知症の人と家族の会では、支援の対象は主に年齢の高い世代でしたが、若い世代の課題にも目を向ける必要があると感じました。
しかし、当時は10代との接点がなく、具体的な支援方法がすぐには思い浮かびません。そこで講演会などを通じてヤングケアラーについて学びを深め、若い人々とつながるためには、まず物理的な居場所が必要だと思うようになりました。
そして2023年、大阪を中心に活動するNPO団体「ふらいおん」の協力を得て、アジハラベイスの活動をスタートしました。インターネット経由で高校生のボランティア講師が集まり、スクールソーシャルワーカーを通じて子どもの利用者も増え、現在に至ります。現在アジハラベイスには幼稚園の年中から中学生まで10人が定期的に通い、ボランティア講師として高校生15人、大人7人が登録しています。 (2025年3月現在)
遊びの時間が、子どもたちを理解するきっかけに
アジハラベイスの活動は主に学習支援を目的としています。しかし、来てくれる子どもたちの多くは中学生以下のため、勉強だけでなく自然と遊びの時間も多くなります。
来ていただくボランティア講師には、勉強だけでなく、ゲームやお喋りを含めた支援であることを伝えていますが、それでも遊びの時間が比較的長いので、「遊ぶ時間が多くて大丈夫?」と高校生のボランティアに聞いたことがあります。すると、「子どもたちと過ごすのが楽しい」との答えがありました。その言葉に、遊びも子どもたちを理解するための立派な関わりであり、信頼を築くための大切な時間なのだとあらためて気づかされました。
また、自炊塾は当初、調理スキルの習得が目的でしたが、実際に始めると、調理や食事を通じて生まれる交流こそが大切だと感じました。自炊塾の時間でコミュニケーションをとり、子どもたちそれぞれの楽しさや悩みに気づくことができ、私たちスタッフにとっても大きな学びになっています。
帰ってこられる場所でありたい
アジハラベイスに最も長く通っている子は約2年になります(2025年3月現在)。自分より年下の子どもをリードして遊んでおり、日々の成長に驚かされます。
先日は、しばらく姿を見せていなかった中学生の男の子が、「また来たい」と再び訪れてくれました。アジハラベイスが彼にとって必要な場所だと感じてもらえたことが、とても嬉しかったです。
ここでスタッフと子どもが関わる時間は、人生の中では短いかもしれません。しかし、子どもたちが成長して悩みを抱えるようなことがあったとき、アジハラベイスのスタッフが、家族とは違うけれど、話しやすい存在[明大1] になるかもしれません。この活動が数年後にどう成長していくのか、とても楽しみです。その頃には、この場所の本当の必要性が見えてくるのではと思っています。
これからは、ぜひ地域の大人の方にも、もっと関わっていただきたいと願っています。
自分が「当事者」かどうか、と考え始めると関わりにくくなってしまいますが、地域活動家・小松理虔さんが提唱する「共事者」のように、一緒に考える・そばにいるという関わり方で、ゆるくつながっていけたらと考えています。そうすることで、子どもたちの抱える課題への理解が広がり、より多くの人が関われるようになります。息苦しい関係ではなく、みんなが自然に集まり、つながる場所―アジハラベイスがそんな居場所になればと思っています。